――“でも”がなんだ。信じたいモノ、信じた結果がどうなったとしても、“陽輝”には“京子”のそれに相応する何かがきっとある。
しばらく抜け殻になっていた陽輝に、さっきの猫が脳に伝えてきた。……いや、猫はもうここにはいない。そう感じた。
それから数時間――実際にはそんなにかかってはいないが、陽輝にはそう感じたのだろう――が経ち、「……ねぇ、何してるの?」と声がして我に返った。
陽輝に声をかけたのは慶子だった。
「あ、いや……」
咄嗟に言い訳が出なかった陽輝は、何も答えることができずにその場を走り去った。
ともあれ陽輝は決心つくにはまだかかりそうですね。